高野川の水質調査                         

 大原を流れる高野川の水質調査を保健環境委員会の子どもたちと行っています。
 
 



 大原中学校では2006年2月から総合学習の環境班と山岳部が、京都大原学院になってからは保健環境委員会が地域の方といっしょに高野川の水質調査を続けています。
 この水質調査は3ヶ月ごと年に4回、大原を流れる高野川の2カ所での定期観察です。ひとつは学校前の高野川と呂川との合流地点です。もうひとつは高野川と宮川との合流地点です。それぞれ高野川へと流れ込む支流が合わさるところです。呂川は梶山を源とし、三千院の近くを流れ 旅館や土産物店のそばを通ってきます。宮川は金毘羅山を源として江文神社から井出町の畑や民家の間を流れてきます。
 調査の方法はパックテストを使用し、水に含まれている物質のいくつかを化学的な方法で数値化します。この結果は琵琶湖・淀川水系水質保全機構のBYQネットワークに参加し、得られたデータを送付しています。淀川水系の各地では、ほぼ同じ日に水質調査を実施しています。
 調査項目は天候、気温、水温、CODアンモニウム態窒素硝酸態窒素リン酸態リン、水の濁り、におい、川原の観察、水深、川底の観察などです。
 三千院のそばを通ってくる呂川が高野川に合流する地点は、秋11月の観光シーズンにはCOD値が悪くなることがありました。  宮川は江文神社あたりから流れてきて 高野川に合流する地点です。上流の民家からの排水によるものか、畑の肥料なのか 急ににごっていたり、アンモニウムイオンの値が悪くなることがあります。
 2011年までは、大原に下水道が整備されていませんでした。そのため家庭からの排水処理には、つぎのどちらかの方法がとられていました。ひとつは合併浄化槽です。トイレからの汚水と台所などからの生活排水を合わせて、家庭に備えられた合併浄化槽で有機物を分解します。このあと川へと流されていました。
 また、浄化槽を備えていないところは、トイレの汚水をバキュームカーで集め京都市の施設でまとめて処理をしていました。ただし、台所からや洗濯の排水はそのまま川へと流されてきました。畑などに使われている肥料の一部が川へ流れ込んでいることもあると思われます。人口の少ない頃にはそれでも川本来がもっている浄化能力が こうした汚れを分解できていたのでしょう。
 下水道ができる頃まで、私たちの水質調査では観光シーズンの毎年11月には、川の浄化能力を超えてしまっていることを示していました。
 下水道の整備が2011年には完成したので、高野川の水質も改善されてきたと思われますが、すぐにすべての家庭からの排水が下水道につながったわけではありません。
それでも 2014年以降の調査結果ではCODなどが観光シーズンにも良くなってきている結果が得られています。これからも私たちは水質調査を続けて 高野川の水質を見守っていきます。

 大原の上水道設備のひとつは高野川の伏流水を利用しています。さらに上流のひとたちがきれいに水を使ってもらっているおかげで、私たちが安全に水を利用できているのです。わたしたちの大原から高野川へと排出した水は 大阪湾へと流れていく途中で、たくさんの街でこの川の水を水源として飲料水が使われています。川の上流に生活するわたしたちが、そのことを忘れないようにしなければなりません。

井出町の桜並木




 

 

 大原の環境保護のシンボルとしてをふやそうと、保護活動に子どもたちと取り組んでいます。
 を保護することによって、クヌギやエノキの茂る豊かな里山などの環境保護を目指しています。また、豊かな大原の里の環境はここに暮らす人たちの生活を守り、観光に来られるひとにも 大原がさらに魅力あるところにもなります。
 
 幼虫の保護には幼虫の食草であるエノキと、成虫のための樹液を出すクヌギの木が必要です。  の幼虫はエノキの葉を食べます。エノキは大原にも高野川沿いに多く、あちこちに見られます。秋には葉が黄色く色づいて、遠くからでもエノキの大木があることを知らせてくれます。
 もう一つ、クヌギの木も必要です。の成虫は花畑にはやってきません。雑木林のクヌギなどへ樹液を吸うためにやってきます。クワガタムシなどと同じです。50年前までの大原なら、台所や風呂で燃料として使うためにたくさんの薪が必要でした。そのための雑木林のいっぱいある里山があちこちに見られたはずです。
昭和の時代にスギやヒノキの植林がたくさん行われ、現在の大原の周りの山々には雑木林は見られなくなりました。いまでは クヌギはごくごくわずかに残っているだけです。
 私たちは クヌギのドングリをポットに植えて苗木を育て、成虫のための樹液を出すクヌギを全校の子どもたちでたくさん植樹しました。この子どもたちが大人になる頃には りっぱなクヌギ林になることを願っています。
 
 毎年7月初旬に放蝶会を行ってきました。教室に保護していた蛹から羽化したチョウを大空に放します。これは地域の人にも関心をもってもらうために行っています。
 はじめの3年間は学校のグラウンドからのオオムラサキを放ちました。でも学校からでは見てもらうのが生徒たちと保護者に限られていたので、最近は里の駅大原において7月初めに開催しています。ここには大原地域のひとだけでなく、多くの観光客の方も来られ保護活動を知ってもらえる機会になっています。
 の保護活動を外部に知らせることは心配でもありました。でも蝶の採集に来られるひとに対しても大原が地域をあげて保護活動をしていることを知ってもらえれば、むやみに採集に来られないでしょう。
 小学3年生のクラスでは 幼虫の観察と蛹の保護、成虫の飼育を担当しています。また、を採らないでと訴えるポスターを制作しました。
 大原の里がだけでなく、ヒトにとっても やさしい自然に包まれた豊かな里になることをめざして。